経済財政諮問会議・新しい資本主義実現会議合同会議で発言する岸田文雄首相(中央)=2024年6月21日午後4時25分、首相官邸、岩下毅撮影

 政府は21日、今年の「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」を閣議決定した。今後の予算編成や法整備の土台になるもので、コスト削減に頼らない「成長型の経済」への移行を掲げた。名目の国内総生産(GDP)を足元の600兆円弱から2040年ごろに約1千兆円にする将来像も示したが、ハードルは高い。財政再建との両立も課題になる。

 11日に示した原案から大きな変更はなかった。自民党など与党の意見を踏まえ、整備新幹線や教師の待遇改善に関する記述を充実させた。ガソリンなど燃料油の価格激変緩和措置について「可能な限り、丁寧に状況を見定めたうえで」「段階的な終了」との記述を加え、廃止に慎重な姿勢をにじませた。

 具体策をより細かく記した「新しい資本主義実行計画」の改訂版も、あわせて閣議決定した。

 骨太の方針を岸田政権でつくるのは3回目。今回の目次には、岸田文雄首相肝いりの「新しい資本主義」「分厚い中間層」は掲げず、「賃上げの定着」「戦略的な投資」といった一般的な用語を使った。

 ただ、実際の中身は「コスト増加分の価格転嫁支援」「働き手のリスキリング(学び直し)促進」「中小企業や新興企業の活性化」など、すでに力を入れている施策の強化が中心だ。人工知能(AI)や半導体など特定の業種を育てる旧来型の産業政策も並ぶ。

 物価高を上回る賃上げの定着に向けて、「あらゆる政策を総動員」するとも記した。文化・芸術の拠点整備や花粉症対策など、幅広い分野を記載。このため総花的になり、ここ数年の骨太の方針の課題とされる「メタボ化」の解消は進まなかった。分量は昨年より数ページ増え、メリハリが乏しく、財政支出が膨らむおそれもある。

 今回は足元の問題に対応する…

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